サフラン ‡喜びあふれる笑顔‡





サイジェントの街の市場にも、日を追うごとに活気を増してきていた。

領主による税の引き下げにより、人々の生活にも余裕ができた為だ。


野菜を売る元気なおばさんの声。

母を呼びながら駆けて行く子供達。

焼きたてのパンの香ばしい香り。



そんな通りを一人の少女が、難しげな顔で歩いていた。


真剣な顔で店先を見つめている様は、周りからしたなら、人にぶつからないか心配になる程だ。


「どうしましょう……」



少女――アヤは途方に暮れながら、小さな呟きを落とした。

その瞳は変わらず立ち並ぶ店に向けられていた。


が、特にどこかの店に立ち寄る訳でもなく、ひたすらに迷う。


(レイドさんは、何が欲しいんでしょう…)



…――そう、彼女はレイドのプレゼントを探しに来たのだ。


明日は彼の誕生日だ。



『君が祝ってくれる、それだけで私は嬉しい』



彼はそう言って笑うけれど。

やっぱり、何かをあげたいのだ。


…そうは思っているけれど、一向に決まらない。


候補は2つ。


手作りで何かお菓子を作るか、アクセサリーを買うか。


この日の為に、魚を市場に卸させてもらったり、シオンに頼んでこっそりとアルバイトもしたおかけで、金銭的には心配は無い。



(さて、どうしましょう?)

†††

お菓子

アクセサリー





作・蒼潤様 http://id11.fm-p.jp/110/underthem706/




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