続いていくもの





出来るなら、ずっと隣がいい。

手を繋いで、ずっと続いていけばいい。



†††




リィンバウムにも、冬が訪れた。

降り積もった雪は、真っ白な平原を作り出し、見慣れた景色もずいぶん様変わりしている。

買い物に行って欲しいと頼まれた二人は、まだ雪のかかれていない道を歩いていた。

レイドを先頭にして、アヤが続く。


「結構積もりましたね…」

「ああ。歩き難くはないかい?」

「ええ、レイドさんの足跡がありますから」


本来なら歩幅が合うはずもないのに、今は彼の足跡にすんなりと足を載せられる。


……こんな細かな気遣いが何気なく出来る彼は、すごいと思う。

それと同時に、嬉しい、とも。

気遣われるということ。

大切にされるということ。

それは、とても幸せだけれど……


(私は貴方に何かあげられますか?)


『何処にも行かないで欲しい』


そう言ってくれた貴方に、私は何を返せる?


「あ………」


声を上げ、足を止めた。

そして、一度後ろを振り返る。


「アヤ?」


レイドの怪訝そうな声に、アヤは前方に顔を戻すと……


「えい!」


声と共にレイドの横に飛ぶ。


「アヤ……!?」


ぽすっと音を立てて、足がふくらはぎの真ん中位まで沈んでしまう。


「ど、どうしたんだい?」

「後ろ、見て下さい」

「…………?」


言われるがままに、後ろを振り向いた彼は、少ししてからこちらに戸惑ったような表情を向ける。


「すまない。解らないのだが……」

「足跡です」

「え……?」


アヤはもう一度後ろを振り向く。


白く平らな道に続くのは一人分の足跡。



「"一人"より"二人"の方が嬉しいですから」



微笑みながら告げると、彼も笑みを返してくれた。


「…そうだな」

「はい!」


行こうか。

そう差し出された暖かな手を取って、歩き出す。




隣に居る。


今はそれ位しか貴方にしてあげられないけれど。






…――それでも、しばらくしてから後ろを振り向いた彼は、


とても、とても嬉しそうに微笑んでいた。




†††




二人でずっと、歩んで行けるのならば。

それは、きっと、とても幸せな事。




作・蒼潤様 http://id11.fm-p.jp/110/underthem706/




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